実施設計・設計監理
「実施設計」とは簡単に言うと、「調査設計」(企画段階)以降の「具体的に建物の仕様を決めて詳細図を作る段階」のことを指します。
「設計監理」とは建築士の作成した実施図面どおりに、工事を請け負った施工者が施工を行っているか、
施主の代わりに確認しつつ現場へ適切な指示を与える業務のことを指します。
そして、図面を作成した建築士が引き続き監理を行うことが一般的です。
前段でも示しましたが、私たちの実施設計・設計監理料(設計監理業務報酬)は
<国土交通省告示第九十八号>を基に、技術経費は弊社の掛け率を用いて、以下の数式により導かれます。
設計監理業務報酬 =[(業務量x人件費単価x2.1)x1.2]x0.8~0.9とします。(特別経費等※は別途精算)
「業務量」は「建物の用途と規模」によって以下の表に表されます。ここでは「事務所」「住宅」を例に説明します。
出典:2019年告示第98号版「建築設計事務所の解説者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準について」業務報酬基準検討委員会編
例えば750㎡(227坪)の事務所の実施設計に、総合(建築)780+構造設計270+設備設計340=1390(人・時間)業務量がかかる、ということ。
設計監理には同様に260+61+91=412(人・時間)の業務量がかかる、というのが国交省の試算です。
これ、そのまま上記の報酬計算式に当てはめると、
某事務所設計監理業務報酬 =[(1390+412)x※32800/8x2.1)x1.2]x0.85=15,825,524円(約1580万円)となります。
よく巷では設計監理料=工事費の10%前後が目安と言われていますが、実際はどうでしょう。
この事務所のケースで、鉄骨造の一般的な坪単価110万円/坪x227坪=2億4900万円工事費がかかるとしましょう。
10%だとすると2490万円です。全然違いますね。
では、総工費2000万円ほどの住宅ではどうでしょう。
出典:2019年告示第98号版「建築設計事務所の解説者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準について」業務報酬基準検討委員会編
坪単価70万円で割り戻して29坪=96㎡の住宅。この規模だと構造設計は必要無いので別表14の100㎡の欄を見ます。
設計:(350+81+110=)541+監理:(180+30+38=)248 =789(人・時間)
某木造住宅設計監理業務報酬 =[(541+248)x32800/8x2.1)x1.2]x0.85=6,929,155円(約690万円)となります。
一般的にはこれはさすがにあり得ませんね。(各工事分離発注を全部設計事務所が段取りするなら話は別ですが)
この計算の盲点は一般的な木造2階建ての設計では構造・設備設計にこれ程人工を掛けず、
現場にて工事監理もそれほど頻繁に行わない、ということなのです。
したがって現実的には某木造住宅設計監理業務報酬 =[(350+150程度)x32800/8x2.1)x1.2]x0.85=4,391,100円(約440万円)となります。
しかしこれが一方、住宅メーカー様で提示される設計料「設計料は工費の10%程度(場合によるもっと低い)」に倣うと、
工費2000万円の住宅で設計料は10%で200万円。
見方を変えれば見積上は見えない設計料が工費や経費の中に紛れ込んでいるか、
設計行為に掛ける人工を設計事務所の半分しか掛けていないということになりますね。
車を買う感覚であれば、それで良いかもしれません。
いずれにしても、設計事務所では普通、住宅設計に800~1000時間の時間を費やすことを考慮すると、
この違いがどういうことなのかお分かりになるかと思います。
「工事費の10%相場」は住宅メーカー様の営業トークが独り歩きしたものとみて良いのではないでしょうか。
結局は、建物を造る場合はお施主様のコンセプト次第であり、個別に見積もってみないと分からないのです。
注釈
※確認申請手数料、各種印紙代は別途とします。
※確認申請以外の関係各庁に対する事前協議及び許認可申請作業は作業量相談の上別途といたします。
※実施設計終了後の大幅な変更が発生する場合は別途費用を申し受けることがあります。
※什器備品(家具、カーテン等)のコーディネートは什器備品代の10%とします。
※敷地測量費(測量会社に依頼します)
※地盤調査費(地盤調査会社に依頼します)
※構造設計費用は別途必要です。
※住宅以外の建物については、設備設計費用が別途必要です。